新薬師寺 | 天平創建の国宝本堂と日本最古最大の十二神将

新薬師寺の国宝本堂と砂利の庭 奈良市

新薬師寺の国宝本堂と砂利の庭

奈良市高畑町、春日大社の南の静かな住宅地のなかに新薬師寺はあります。目の前まで来ても大伽藍らしい構えはなく、白い土塀と門がぽつんとあるだけです。ところがその門をくぐると、天平時代からそのまま立っている国宝の本堂が、砂利を敷いた広い庭の正面にどっしりと構えています。

新薬師寺について

華厳宗のお寺で、正式には日輪山新薬師寺といいます。住所は奈良市高畑町1352番地。近鉄奈良駅からバスで破石町まで行き、そこから東へ坂を上がって15分ほど歩いた場所です。

「新薬師寺」と彫られた石標と門

道端に「新薬師寺」と彫られた石標が立っています。周囲は民家と土塀が続く道で、案内が無ければ通り過ぎてしまいそうな入口です。

新薬師寺の門ごしに見る本堂

門をくぐると、その先に本堂が見えます。柱には「大和十三佛第七番霊場」「西国薬師第六番霊場」の木札が下がっていました。

「大和十三佛第七番霊場」「西国薬師第六番霊場」の木札

由緒・歴史

新薬師寺の公式の説明によると、創建は天平十九年(747年)三月。大仏の造立中に体調を崩した聖武天皇の病気平癒を祈って、光明皇后が創建したと伝わります。薬師如来像の造立と薬師経の写経が命じられたことがきっかけだったそうです。

創建当時は金堂・壇院・薬師悔過所・政所院などが並ぶ壮大な寺院でしたが、金堂は平安時代に倒壊してしまいました。そのあと、境内の東の標高の高い場所にあったお堂が、いつの頃からか本堂になったと説明されています。

いま国宝に指定されているのがその本堂で、堂内には本尊の薬師如来坐像と、それを取り囲む十二神将立像が安置されています。奈良市観光協会の説明では、この十二神将立像は日本で最古最大の奈良時代のものとされています。境内の南門・東門・鐘楼・地蔵堂は、いずれも鎌倉時代に建てられた重要文化財です。

新薬師寺に行った感想

本堂は、想像していたより背が低くて横に長い建物でした。二階建てのような重なりも、極彩色の装飾もありません。白い壁と日に焼けた木の柱、本瓦の屋根だけです。それなのに正面に立つと、ただの四角い箱には見えない厚みがあります。

新薬師寺本堂の軒と垂木、塀ぎわの萩

軒の下に回ると、垂木が等間隔にずらりと並んでいるのが見えます。塀ぎわには萩が伸びて、細い花が屋根の線にかかっていました。訪れたのは十一月のはじめで、境内の木々はまだ緑が残り、桜だけが少し色づいている頃でした。

苔の生えた新薬師寺境内の参道

本堂の脇からは、苔の生えた細い参道が続きます。

新薬師寺境内の池と木々

奥には小さな池があって、水面に緑が映り込んでいました。人の声はほとんどせず、砂利を踏む自分の足音のほうが大きいくらいです。ここが奈良公園から歩いて来られる距離だとは思えない静けさでした。

「香薬師如来」の扁額

境内のお堂には、金字で「香薬師如来」と彫られた扁額が掛かっていました。この香薬師像は白鳳期の金銅仏として知られていますが、昭和十八年(1943年)の盗難以降、行方が分からないままです。奈良国立博物館には模造が収蔵されています。実物が無いまま扁額だけが残っているのだと思うと、しばらく見上げてしまいました。

幻の七仏薬師金堂

境内の一角には、ガラスケースの展示がありました。札には「七仏薬師金堂跡 出土品」とあり、灯明皿や奈良三彩のかけらが並んでいます。

七仏薬師金堂跡の出土品の展示ケース

平安時代に倒れたとされる創建時の金堂は、長いあいだ場所も分かっていませんでした。それが2008年、隣接する奈良教育大学の構内で大型の基壇建物の跡が見つかります。奈良教育大学の説明によると、この遺構は東西50メートル以上になる規模で、756年(天平勝宝8年)に成立したとされる正倉院宝物「東大寺山堺四至図」に描かれた新薬師寺の七仏薬師金堂にあたる可能性が高いとされています。

いま歩いている静かな境内の、すぐ隣の地面の下に、それだけの建物が埋まっていたわけです。ケースのなかの小さなかけらが、急に大きなものに見えてきました。

新薬師寺の基本情報

観光地名新薬師寺(しんやくしじ)
住所〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1352番地
アクセス(電車・バス)JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス15分「破石町」下車、徒歩15分
駐車場普通車15台・無料
拝観料大人・大学600円/高校・中学350円/小学150円(30人以上の団体は550円/300円/120円)
拝観時間9:00〜17:00

拝観料と拝観時間はお寺の公式サイト、アクセスと駐車場は奈良市観光協会の公式サイトの記載に合わせています。おでかけ前に最新の情報をご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました