石光寺 | 日本最古といわれる弥勒石仏が残る中将姫ゆかりのぼたん寺

石光寺のお堂の屋根を背に咲く赤いぼたん 葛城市

石光寺の門と「勅願寺 石光寺」の標柱

石光寺について

奈良県葛城市の染野(そめの)、二上山(にじょうざん)の東のふもとにたたずむのが石光寺(せっこうじ)です。別名を「染寺(そめでら)」といい、春のぼたんやしゃくやく、冬の寒ぼたんで知られる「関西花の寺二十五霊場」の第二十番札所にもなっています。私がお参りしたのも、ちょうどぼたんが見頃を迎える春で、境内は色とりどりの花で埋め尽くされていました。

山門のそばには「勅願寺 石光寺」と記された標柱が立っていました。花のお寺というやわらかな印象の奥に、とても古い歴史を持つお寺なのだと、門をくぐる前から伝わってきます。

石光寺の参道と両脇に咲くぼたん

受付を入ると、きれいに刈り込まれた生垣に挟まれた参道が続き、その両脇にぼたんの株がずらりと並んでいました。華やかでありながら落ち着いた、手入れの行き届いたお庭が広がっています。

石光寺の由緒・歴史

石光寺のお堂の屋根を背に咲く赤いぼたん

石光寺の創建は、天智天皇の勅願によると伝えられています。弥勒石仏に添えられた説明板には、『當麻曼陀羅縁起(たいままんだらえんぎ)』から引いて「天智天皇の御代に、光る石があり、それを弥勒三尊に彫刻して、精舎一堂を建立した」という言い伝えが紹介されていました。この「光る石」から「石光寺」という寺名になったとされ、お寺のはじまりそのものが一体の石仏にあるというのが印象的です。

平成三年(1991年)の弥勒堂の改築にともなう発掘調査では、この伝承を裏づけるように、金堂の礎石や須弥壇のあと、石仏、文様のついた塑壁(そへき)などが見つかったそうです。言い伝えが発掘で確かめられた、貴重なお寺でもあります。

日本最古といわれる弥勒石仏

「石光寺の石仏」の説明板

石光寺の大きな見どころが、この弥勒石仏(みろくせきぶつ)です。説明板によると、石仏は礎石建物の東側、鎌倉時代の遺物が入った土層から出土したもので、二上山でとれる凝灰岩(松香石〈しょうこうせき〉)を丸彫りした、日本最古の石仏といわれています。

石光寺の弥勒石仏の仏頭(展示室)

頭部と胴体、手の部分や台座の一部が残っており、もとの大きさは半丈六(はんじょうろく・約155cm)ほどと考えられているそうです。石に残された細部の表現などから、つくられた年代は白鳳(はくほう)時代(7世紀後半)と推定されています。

「弥勒石仏(文化財・白鳳時代)」の説明板

胸を張って胴をぐっと引き締めた体つきには重量感があり、説明板では、同じ地域にある當麻寺(たいまでら)の金堂本尊・弥勒如来坐像(国宝)を思わせる、中国初唐様式の影響が指摘されていました。平安の頃に火災で首や両手が折れ、その後も補修を重ねながら長く信仰されてきたことも分かるとのことです。石仏は展示室に大切に安置されていました。

中将姫と「染の井」「糸掛桜」

中将姫・糸掛桜の石碑と説明板

石光寺がもう一つの名前「染寺」と呼ばれるのは、中将姫(ちゅうじょうひめ)の伝説にちなみます。境内の説明板によると、中将姫は右大臣・藤原豊成(とよなり)の娘で、幼くして母を亡くし、継母のつらい仕打ちにあって、十七歳で當麻寺に出家したと伝えられています。

染の井のそばに立つ中将姫の石像

生身の阿弥陀さまを拝みたいと願い続けた姫は、やがて蓮(はす)の茎から糸を採り出し、この境内の井戸の水で洗い清めて、かたわらの桜の木に掛けて干しました。すると糸は五色に染まり、その糸で一夜のうちに織り上げられたのが、名高い當麻曼陀羅だと伝えられています。この井戸は「染の井」、桜の木は「糸掛桜(いとかけざくら)」と呼ばれ、お寺が「染寺」とも呼ばれるようになったそうです。井戸のそばには、中将姫の像が静かに立っていました。

石光寺に行った感想

石光寺の境内に咲く黄色いぼたん

私がお参りした春は、まさにぼたんの季節でした。赤やピンク、白、黄色と、色も形もさまざまなぼたんが境内のあちこちで大輪の花を咲かせていて、歩いているだけで気持ちが華やぎます。

石光寺の藤棚に垂れる藤の花

ぼたんだけでなく、藤棚には薄紫の藤が長く垂れ下がり、足元にはつつじやしゃくやくも咲いていて、まるで花の競演のようでした。

石光寺の鐘楼と庭の緑

庭園は回遊式になっていて、古い鐘楼や石仏、句碑などが花々の合間に配され、どこを切り取っても絵になります。

石光寺の山門内側の盛り砂「想観の沙」

山門の内側には、白い盛り砂がきれいに整えられていました。「想観の沙(そうかんのすな)」という名で、手前が方形、奥が円形につくられ、阿弥陀経の教えを表しているのだと説明板にありました。花の美しさを楽しみながら、古い信仰の跡にも静かに触れられる。花のお寺でありながら、日本有数の古い石仏が伝わるお寺でもある。その両方を一度に味わえるのが、石光寺の魅力だと感じました。

石光寺の基本情報

観光地名石光寺(せっこうじ)/別名・染寺(そめでら)。関西花の寺二十五霊場 第二十番
宗派浄土宗
住所奈良県葛城市染野387
アクセス(電車)近鉄南大阪線「二上神社口駅」から徒歩約15分
アクセス(車)西名阪自動車道「香芝IC」から約15分
駐車場寺門前に約7台、第2駐車場に約30台
拝観料大人400円、小学生200円
拝観時間8:30〜17:00(春のぼたん・しゃくやくの時期)。11〜3月は9:00〜16:30。※資料により開門時刻の表記が異なるため、最新は石光寺へご確認ください

※この記事の写真は2019年4月に撮影したものです。現在の様子とは異なる場合があります。

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